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ICLは視力低下防止になる?近視の原因や進行しやすい年齢を解説

多くの人が眼鏡やコンタクトレンズで視力矯正をする今、大人で裸眼視力が1.5以上ある人に出会うととても貴重に感じられませんか?それだけ、視力低下が当たり前になってきているということ。近年では子どもの近視進行も問題視されてきています。
ICLに興味を持つ方からは「視力低下防止にも効果があるの?」という質問も。本記事では近視の原因や進行する年齢について改めておさらいし、ICLと視力低下予防の関係についても詳しくお答えします。
■なぜ視力は低下するの?
まずは視力が低下する原因について。原因には大きく分けて「遺伝要因」と「環境要因」があります。それぞれ解説しましょう。
・視力低下の原因1:遺伝要因
遺伝によって視力が低下するのは、両親から受け継いだ眼球の大きさが影響しています。
例えば、眼の中にはレンズの役割を担う角膜・水晶体、そして像を結ぶ網膜がありますが、眼球が生まれつき大きいとレンズがピント調節しきれず、網膜よりも手前に焦点が来てしまうことに。結果、遠くのものがぼやけて見えてしまいます。これが「軸性近視(じくせいきんし)」と呼ばれる状態。一方で、眼球が小さすぎて近くのものが見えにくく、遠視になることを「軸性遠視(じくせいえんし)」と呼びます。
遺伝による軸性近視には、眼鏡をはずしてしまうと生活がままならないほどの強度近視の人が多い、という傾向があるのです。
・視力低下の原因2:環境要因

年々増加傾向にある、子どもの視力低下。文部科学省による「令和2年度学校保健統計調査」によると、裸眼視力1.0に満たない子ども(小学生~高校生)の割合が、2017年ごろから増加し続けています。
このデータから分かるのは、視力低下には遺伝的要因だけでなく、生活環境が大きく影響しているということ。例えば、ゲームやスマホ、テレビの画面を注視し続けると、一点を見つめることによって目にかなりの負担がかかり、視力低下を招きます。
また、目の周りに酸素が行き届かなくなることも視力低下の原因です。猫背で座り続ける、同じ姿勢でずっと作業する状態が習慣化すると、血流が悪くなり酸欠状態に…。その結果、遺伝的要因はなくても、近視がどんどん進行してしまうといったケースも少なくありません。
■近視が進行する年齢は?

「子どもの近視は進行しやすい」という話はよく聞きますが、具体的には何歳から発生し、何歳まで進行するのでしょうか。実際には、子どもだけでなく大人であっても近視が進行するケースがあります。詳しく解説しましょう。
・【小学生~高校生頃まで】子どもの近視進行
先天性の近視を除けば、6歳~9歳頃から近視の発生が見られるように。その後、10歳まではゆるやかに進行する場合がほとんどですが、10歳~12歳頃には急激に視力が低下することも多く、近視用メガネが必要になる子どもも増えてきます。
ちょうどこの年齢の子どもは成長期を迎え、身体が大きく成長する時期。身体が大きくなると同時に眼球も大きくなるため、ピント調節がしづらくなり、近視も進行しやすくなります。また、先ほど解説した子どもの生活環境も近視進行を早める要因に。小学校高学年からスマホを持ち始める子も増え、ゲームを長時間するようになると、目への負担も増えていきます。
ただ、子どもは自分の視力低下に気づかないことも多く、眼科の受診が遅れてしまう場合も少なくありません。黒板の字が見えにくい、体育の授業や部活でボールが見えにくいといった症状が出てから、初めて近視に気がついたというケースもよくあるようです。
近年では、リモート授業やタブレットを使った授業も増えてきていて、子どもたちの目への負担も以前より大きくなってきています。今後、ますます近視が進む子どもが増えてくる可能性も高いでしょう。
・【20歳~】大人の近視進行
近視の進行は22歳~23頃までには止まることがほとんど。ただ、23歳以降に近視になったり、進行が止まらなかったりするケースも年々増えてきており、「成人近視」として問題視されています。
大人の近視進行の多くは、同じ姿勢でPCやスマホの画面を見続けることによる眼精疲労が原因。ピント調節に必要な毛様体筋の緊張状態が続くと、徐々に遠くのものよりも近くのものが見やすい眼へと適応し始め、近視が進行してしまいます。
注意が必要なのは、40歳以降の近視進行です。眼になんらかの病変が起きている可能性が高いため、早急に眼科を受診する必要があります。
■ICLは視力低下防止になる?
「眼内コンタクトレンズ」とも呼ばれるICLは、小さなレンズを眼の中に移植する治療法。術後の視力矯正力が安定しているため、長期にわたって矯正後の視界を保つことができます。もちろん回復した視力が何年持つかは個人差がありますが、視力低下に悩む方の中には、これ以上の近視進行を防ぐ目的で、ICLを検討している方もいるでしょう。
しかし、ICLには視力低下を抑制する効果はありません。むしろ、近視が進行している年齢で施術すると、せっかく手術が成功したとしても、術後に再び視力が低下してしまうことも…。そのため、ICLには適応年齢が設定されています。
・何歳からが適切?
ICLの適応年齢 ICLの適応年齢は視力が安定してくる18歳以上です。また、ICLは老眼があっても手術を受けることは可能ですが、老眼治療はできません。老眼の症状が出やすい40歳後半以降での手術もやめた方がいいでしょう。
ちなみにICLには年齢以外にも適応条件があります。例えば、視力が安定していることはもちろんですが、妊娠・授乳中でないことや重篤な病気にり患していないこと、眼病がないことなどです。これらの条件を守らないと思ったような効果が得られず、後悔することになるかもしません。
・もし術後に視力が低下してしまったら?
もし仮に術後に視力が低下してしまった場合、取り出したレンズを新しい度数のものと交換することも可能です。角膜を削って視力回復させるレーシックには手術前の状態に戻せないデメリットがありますが、レンズを挿入するだけのICLは術前の状態に戻せるというメリットも。視力が低下してもレンズ交換を行えば、再び快適な見え方に戻すことができます。
ただし、レンズの入れ替えは目への負担も大きいもの。手術を受ける際には、近視進行が落ち着いているかどうかを十分に確認することが大切です。
・ICLは「視力回復」のための手術

ここまでで解説した内容が、ICLに年齢制限が設けられている理由です。視力が進行する可能性のある年齢では、治療の効果を十分に得ることは難しいでしょう。
ICLはあくまで視力を回復するための手術です。ICLを検討中の方は、視力低下防止ではなく視力回復に有効な治療法ということを、ぜひ覚えておいてくださいね。
■視力低下防止はICLではなく生活習慣の見直しを!
最近、急激に視力が低下してきたという方は、まず生活習慣を見直しましょう。軽度の近視であれば、スマホやPCから離れて目を休ませることで、進行を遅らせる手助けになるはずです。ICLを受けられるか分からないときには眼科医へ相談を。今は施術を見送るべきか、受けられるか適切な判断ができます。当院でも事前に細かく検査、診察を行っていますので、お近くの方はぜひ相談へお越しください。