ARTICLE 記事
ICLはなぜ自由診療なの?保険金給付の対象になる?

眼の中に小さなレンズを入れて近視や遠視、乱視を矯正する視力回復法「ICL」は、公的健康保険の対象外なので、費用は全額自費負担となります。なぜ、ICLは保険診療ではないのか、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、公的健康保険がきかない「自由診療」について詳しく解説するとともに、ICLは保険金給付や医療費控除の対象になるのかどうかについても言及します。ICLの手術を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
■自由診療とはどういう診療?

ICLは、公的健康保険の対象外である「自由診療」となります。まずは、自由診療について詳しく解説していきましょう。
・自由診療とは?
自由診療とは、費用がすべて患者負担となる医療技術や薬剤による治療のことを指します。自由診療は、保険診療のように「この病気はこの治療法で」といった決まりや制限はありません。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
・美容整形
・健康上の理由以外の専門的な漢方治療
・遺伝子検査
ICLのほかに、レーシックも自由診療となっています。ICLやレーシックは、ケガや病気による治療には該当しないため、公的健康保険が適用されません。
・自由診療のメリット・デメリット
前述したとおり、自由診療には制限がないので、さまざまな治療法や医薬品にトライすることができる、というメリットがあります。患者の要望に合わせた細かな検査が実施できるので、状態や体質に合った治療を行うことが可能です。
さらに、日本では未認可の医薬品や最新の医療技術なども利用することもできます。
一方、自由診療は、健康保険が使えないため、治療費が高くなってしまうというデメリットがあることも特徴。中には科学的根拠が乏しい治療法もたくさんあるため、すべての治療法が、公的健康保険適用の治療法よりも優れているとは限りません。
・保険診療との違いは?
保険診療と自由診療の大きな違いは、自己負担額の割合です。保険診療とは、健康保険法及び国民健康保険法によって定められている診療のこと。
保険診療の自己負担の割合は、原則3割(年齢や所得によって異なる)です。保険診療の場合、1ヵ月の医療費が定められた上限を超えたときに、高額療養費制度を利用することで超過分の払い戻しを受けることができます。
ただし、保険診療は自由診療と異なり、それぞれの治療内容が定められています。診療報酬の点数も決まっているので、全国どこの医療機関でも、同じ金額で同じ治療を受けることが可能。
その点自由診療は、患者と医療機関の間で個別に契約される医療行為なので、費用や治療内容の制限はありません。
医療機関は自由診療の金額を自由に決めることができ、患者は希望の治療法を選択することができます。
■ICLは保険金給付の対象になるか?
ICLの治療費は全額自己負担となると、気になるのは「民間の医療保険の給付対象になるかどうか」ではないでしょうか。アフラックや県民共済、日本生命など、さまざまな保険会社からたくさんの保険商品が販売されています。もし、保険給付金の対象になれば、ICLの価格に対するハードルがグンと下がるでしょう。
しかし、給付対象になるかどうかは加入している保険によって異なりますし、加入している時期によっても異なる場合があるので注意が必要です。
これから新しく保険に加入する場合は、残念ながらICLは給付金支給の対象外となるでしょう。現在加入できる医療保険等は、病気ではないケースの自由診療は一般的に、給付対象から除外されているからです。
しかし、すでに医療保険に加入している場合は、ICLが給付金の対象となっている可能性も!医療保険の給付対象は、定期的に見直しが行われています。そのため、加入時に病気ではないケースの自由診療もカバーするタイプの医療保険に入っていれば、給付金が支給される可能性もあるのです。
給付対象かどうかは、加入している保険会社の約款で確認することができます。もし、約款を読んでもよくわからない、という場合は、保険会社に直接尋ねるとよいでしょう。
■ICLは医療費控除の対象になる

ご自身が加入している保険では、ICLは給付金の対象外だったからと言って、がっかりすることはありません。ICLは医療費控除の対象なので、手続きをすれば、その年の所得税と翌年の住民税を安く抑えることができ、いくらかのお金が戻ってくるケースがあります。ここでは、医療費控除について、手続きの方法なども含めて解説していきましょう。
・医療費控除とは?
医療費控除とは、1年間にたくさんの医療費を支払った場合、所得税が安くなる「所得控除」のひとつです。一般的には、年間の医療費が10万円を超えると、控除が適用となります(その年の総所得金額が200万円未満の方は、総所得金額の5%を超える場合に適用)。
対象となる医療費は、
・納税者が自分自身及び生計を共にしている家族のために支払った医療費
で、なおかつ
・1月1日から12月31日までに支払った医療費
となります。
医療費の控除額は、
「1年間の医療費の合計額-医療保険などから支給された給付金-10万円」となります。
控除額に税率をかけた金額だけ所得税が安くなる、というわけです。医療費控除は、住民税にも適用されます。
・医療費控除の手続き方法
医療費控除の手続きは、確定申告で行います。通常確定申告は、1月1日から12月31日までの所得及び税金を計算して、翌年の2月16日から3月15日までの間に申告書類を提出しなければいけません。
しかし、確定申告をする必要のない会社員が医療費控除の申告のみを行う場合に限り、「還付申告」という形になるので、3月15日を過ぎても提出ができます。
還付申告の期限は、医療費控除を申請希望する年の翌年の1月1日から5年間。その年に確定申告をしていない人もさかのぼって申告することができます。
医療費控除を申請するためには、対象となる医療の領収書を保管しておくことが大切です。領収書がないと、申請することはできません。ICLの手術を受けた際は、領収書は捨てずにしっかりと保管しておきましょう。
医療費の控除は、確定申告書に「医療費控除の明細書」もしくは、医療保険者より交付を受けた「医療費通知」を添付します。医療費控除の明細書を作成するには、1年間の医療費をまとめたり、申請書の手引きに従って医療費控除額を計算したり、と少々骨の折れる作業になります。しかし、書いて提出さえすれば税金が安くなる制度なので、覚えておいて損はありません。
なお、確定申告を行う際は、源泉徴収票が必要となります。
・ICLは高額療養費制度対象外になる
ICLは、「高額療養費制度」の対象外となるので気を付けましょう。前述したとおり、高額療養費制度は保険診療が対象の制度なので、自由診療のICLは適用されません。
■ICLを受けるなら確定申告を忘れずに
ICLは自由診療なので、費用は全額自己負担となってしまいます。また、加入している民間の医療保険によっては、給付金の対象外となっている可能性もあるでしょう。しかし、確定申告をすることで医療費が控除となり、還付金を受け取れるケースも。医療費控除の申請方法は少々複雑ではありますが、節税対策であるので、行って損はありません。ICLを受けたいけれど費用がかかってしまうのがちょっと…と思っている方は、医療費控除を利用することで、その悩みが解消されるかもしれませんよ。