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ICLの手術を受ける前には、必ず「適応検査」が行われます。適応検査は眼の状態を詳しく調べて、ICLの手術適応かどうかを判断する大切な検査です。そこで今回は、ICLの適応検査ではどのようなことを行うのか、その内容を詳しく解説していきます。また、ICLの適応検査や手術を受ける際の注意点もあわせてご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
■ICLの手術の流れは?
まずは、ICLの手術の一連の流れを紹介しましょう。
・来院予約
手術を受ける前に適応検査及びカウンセリングを行いますので、来院日の予約を取ります。予約の方法は電話やインターネットなど、医療機関によって異なるので、事前に確認しておくとよいでしょう。
・適応検査・カウンセリング
ICLの手術を受けることができるかどうか、眼の中を詳しく検査します。また、カウンセリングでは、どのように手術が行われるかの説明を受け、疑問点や不安なことの相談も可能です。
・手術申し込み
適応検査で手術適応と判断されれば、手術日の申し込みを行います。手術日だけでなく、「術前検査」「手術後の通院スケジュール」もあわせて決定。予定がはっきりしない場合は、後日改めて申し込むことも可能です。
・初回精密検査
手術前の検査で、眼の中に入れるレンズの度数を決定。度数が強すぎたり弱すぎたりしないように、精密な検査を行います。時間も3時間程度と、通常の眼科での検査よりも長い時間を要しますが、今後の見え方を左右する、とても大切な検査です。
・最終精密検査
最終精密検査を行い、データを再度検証し、オーダーするレンズを確定。検査結果が初回精密検査の結果と大きくずれている場合は、後日再検査となります。
・手術前準備
手術の3日前から、手術当日までの間、消炎剤と抗菌剤の目薬を点眼します。また、当日は瞳孔を大きく開くために、手術前に散瞳剤を点眼。その後、点眼麻酔・眼の消毒を行います。
・手術
麻酔がしっかりと効いたことが確認できたら、いよいよ手術開始です。まず、黒目と白目の境目に、数mm程度の小さな創口を作成します。そこからレンズを折りたたんだ状態で挿入。その後、レンズを虹彩と水晶体の間に固定すれば手術は終了です。所要時間は両眼で約20~30分。手術後、院内で安静にしたのち、診察で異常がなければ帰宅できます。入院の必要はありません。
・術後検診
手術の翌日に診察を受けて、眼の状態を確認します。その後、3日後検診・1週間後検診・1カ月後検診・3カ月後検診・半年後検診・1年後検診、と続きます。1年後以降も、毎年1回以上、定期的に検診を受けるようにしましょう。
■ICLの適応検査では何をする?

ICLの適応検査は、10種類以上行われます。それぞれとても大切な検査なので、面倒くさがらずしっかり受けるようにしましょう。ここでは、どのような検査が行われるのか、それぞれ詳しく解説します。
・他覚的・自覚的屈折検査
他覚的屈折検査では、近視・遠視及び乱視の度数をはかります。自覚的屈折検査では、裸眼の視力及び、レンズを装用すると最高でどれくらいの視力が出るのかを計測。40歳以上の人は、近くの視力(近見視力)も測ります。
・角膜内皮細胞検査
角膜の透明度を保つ「角膜内皮細胞」の数が、じゅうぶんにあるかどうかを測定。また、大きさや形も正常かどうかを調べます。
・角膜形状検査
角膜の前面及び後面の形状、角膜の直径、厚さなどを計測します。
・眼圧検査
眼圧の方さを計測します。正常値は10~21mmHgです。
・前房深度値・前眼部画像解析
角膜内皮から水晶体の前面までの距離をはじめ、手術に必要となるデータを計測します。
CASIA2で検査の負担減!
当院では、前眼部の検査に「CASIA2」という機器を導入しています。CASIA2は非接触型で、近赤外光を照射することで、角膜から水晶体までの断層が3Dで撮影可能です。眼に直接触れることがないので、患者さんの負担も少なく、従来の機器に比べると、より早く・より正確に前眼部の状態を計測することができます。
・涙液検査
涙液の量や涙液の安定性を測定して、ドライアイになっているかどうかを測定します。
・瞳孔径検査
暗いところ及び明るい所での黒目(瞳孔)の大きさをはかります。
・細隙灯顕微鏡検査
細隙灯顕微鏡という装置を使用して、眼の状態を調べる検査です。細隙灯と呼ばれるスリットランプから細い帯状の光を出して眼に照らし、顕微鏡で拡大して診察。結膜や角膜・涙液・水晶体などの組織に異常がないかを調べます。細隙灯顕微鏡検査は医師が行います。
・精密眼底検査
瞳孔を開く目薬を点眼して、眼の奥にある網膜や脈絡膜、視神経などの状態を観察します。眼底カメラや眼底鏡という機械を使用して検査。眼の疾患だけでなく、糖尿病や高血圧、動脈硬化、脳腫瘍といった全身疾患について確認することもできる検査です。
■ICLを受ける際の注意点

ICLの手術を受ける際は、いくつかの注意点があります。安心・安全に手術を受けるために、良好な視力を得るためにも、必ず守るようにしましょう。
・検査前はコンタクトの装用を控える
ICLの検査は、角膜を正常な状態に保って行う必要があります。しかし、コンタクトを装用していると、角膜の形状が変化してしまうため、正確なデータを得ることができません。そのため検査の前には、一定の間コンタクト禁止期間が必要です。一般的な装用中止期間は以下の通りです。
ソフトコンタクトレンズ…術前検査の2週間から
ハードコンタクトレンズ…術前検査の3~4週間前から
装用中止期間を守らないと、眼の状態にあった正確なレンズをオーダーすることができません。レンズがつけられなくて不便に感じるかもしれませんが、必ず守るようにしましょう。
・当日、車の運転はNG
手術前の検査では、眼の奥の状態を詳しく調べるために、瞳孔を開く「散瞳剤」を点眼します。目薬をしている間は、光がまぶしく感じたり、視界がぼやけたりします。効果は4~8時間程度続くので、検査後もしばらく見えにくい状態に。車の運転は非常に危険なので、検査がある日は車の運転をしないようにしましょう。
また、ICLの手術当日も車の運転はNGです。医師の許可が出るまでは、車の運転は控えてください。
・術後も日常生活に制限がある
・入浴
首から下のシャワーは当日からOK。洗顔・洗髪は術後4日経過してからです。
・デスクワークや家事
基本的に制限はありません。しかし家事は疲れない程度にとどめておきましょう。デスクワークは翌日から医師と相談の上で行ってください。
・化粧
アイメイク・ベースメイク以外(チーク・リップなど)は術後当日から。アイメイク・ベースメイクは術後1週間経過してからとなります。
・車の運転
翌日から医師と相談の上で、OKが出れば運転できます。ただし、夜間は光がぎらついたりにじんだりする「ハロー・グレア現象」が起こっている可能性があるので、慎重に運転してください。
・運動
ジョギングやゴルフなどは、術後1週間経過してから。水泳・マリンスポーツなどは、1カ月控えてください。
■適応検査はICLのデータを決定する大切な検査
ICLの手術前には、適応検査をはじめさまざまな検査を行います。検査の項目がとても多く、大変に感じてしまうかもしれませんが、ICLのデータを決める大切な検査です。適応検査の結果によって、手術後満足できる見え方になるかどうかが決まるのです。今後の快適な見え方のためにも、注意点を守って、しっかり検査を受けるようにしてください。