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ICLの歴史はどれくらい?レーシックよりも古いって本当?

ICLの手術が行われるようになったのはつい最近、と思っている方も多いのではないでしょうか?実はそれは誤解。ICLの歴史は意外と古く、レーシックよりも先に誕生していたのです。この記事では、ICLについて、その概要やメリット・デメリットを詳しく解説するとともに、ICLの歴史について紐解いていきたいと思います。
■ICLとはどんな手術?

ICLは、「Implantable Contact Lens」の頭文字を取った言葉です。日本語に訳すと、「挿入できるコンタクトレンズ」という意味になります。その名の通りICLは、眼の中にソフトコンタクトレンズのような小さくて柔らかいレンズを挿入して、近視や遠視、乱視を矯正。裸眼での視力回復を目指す手術です。
ただ、学術誌などではImplantable Collamer Lensと記載されており、医学的にはこちらのほうが正しい言葉となります。「Collamer」とはレンズに使われている「コラマー」という素材のこと。コラマーはコンタクトレンズの素材として使用されているコラーゲンと、HEMA(ハイドロキシエチルメタクリレート)を合わせて作られた、親水性があり、柔らかい素材となっています。生体適合性が高いので、眼の中に入れても異物として認識されることが少ないのが特徴です。
ICLの手術は角膜を削ることなく行われます。まず、散瞳剤を点眼して動向を開いてから点眼麻酔を行い、黒目と白目の境目を3mm程度切開。切開した部分からレンズを挿入し、虹彩と水晶体の間に固定させます。その後、開いていた瞳孔を縮小させて手術は完了です。
手術時間は30分程度で完了するため、入院の必要がなく、日帰りが可能となっています。
ICLはその安全性と有効性の高さから、厚生労働省の認可も受けている視力矯正方法です。
■ICLのメリット・デメリット
続いて、ICLのメリット及び注意点をご紹介します。
・ICLのメリットとは
まずはICLのメリットについて見ていきましょう!
手術の適応範囲が広い
ICLはレーシックと違って角膜を削る手術ではないので、手術の適応範囲が広い、というメリットがあります。例えば、レーシックの手術ができない人の特徴である、強度近視・乱視の人、角膜が薄い人も手術をすることが可能です。
いつでも元の状態に戻せる
角膜を削って視力を矯正するレーシックは、一度手術を受けると元の状態に戻せません。一方ICLは、眼の中のレンズを取り出せば、いつでも手術前の状態に戻すこともOK。ICLの手術後に白内障にかかっても、レンズを取り出せば、白内障の手術を受けることができます。
また、ICLの手術後に近視や乱視が進んでも、レンズの度数を調整すれば、再び良好な視力を得られるというメリットも。
見え方の質がいい
角膜を削るレーシック手術は、術後にわずかな角膜の歪みが生じることがあります。そのため、見え方の質やコントラストが若干変化してしまう可能性も…。その点ICLの場合は、眼の中に精密なレンズを挿入して視力を矯正するので、見え方やコントラストもよく、クリアな視界を手に入れることができます。
近視の戻りが少ない
強度近視の人がレーシック手術を受けると、何年か後に「近視の戻り」が起こり、近視がリバウンドしてしまうことがあります。一方、ICLの場合は、近視の戻りが起きる可能性が低いので、長期にわたって快適な見え方の維持も可能です。
お手入れの必要がないので楽
眼の中に入れたレンズは、めんどうなお手入れをする必要がありません。また、定期的に交換する必要もないので、見え方や眼の調子が悪くない限り、長期的に入れたままにしておくことも可能。中には、レンズが何年持つのか気になる人もいるかもしれませんが、基本的にICLの眼内レンズは一度入れると半永久的に視力を維持できる、と言われています。
老眼の矯正もできる
老眼になったらICLの手術を受けられないのでは?と思っている人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。眼内レンズには、多焦点レンズもあるので、近視や乱視同様、老眼の矯正も可能です。近視があるけれど老眼も気になるという方は、手術前に医師に相談をしてみると良いでしょう。
術後のリスクが少ない
ICLは他の視力矯正手術と比べて、術後のリスクが少ない、という特徴も。レーシック手術は、角膜の表面を薄く切り取ってフラップ(蓋)を作成します。その際、知覚神経が切断されてしまい、ドライアイを発症することがあるのです。切断された知覚神経は3ヵ月程度で元に戻りますが、一度発症したドライアイはその後もしばらくの間続くケースがあります。
また、レーシック手術後は、暗い所で光がにじんで見えたり、まぶしく感じたりする「ハロー・グレア現象」が起こる可能性も…。角膜にわずかな歪みが生じるため、コントラストが低下したりする恐れがあります。
その点ICLは角膜を削ることがないので、これらのリスクを抑えられるという点は、メリットであるでしょう。
・ICLのデメリットとは
次に、ICLのデメリットについても知っておきましょう。
レンズ到着までに時間がかかる
ICLは手術前の検査に基づいて、一人ひとりオーダーメイドでレンズを発注しています。そのため、国内に希望する度数のレンズの在庫がない場合は、レンズが届くまでに1~3ヵ月程度の時間を要する場合も…。ICLの手術を希望する場合は、余裕を持ったスケジュールを立てておきましょう。
費用が高額になる
ICLは公的保険の対象外の自由診療なので、全額自己負担となります。費用の相場は両眼で約40~70万円です。度数が強いレンズや乱視のレンズを挿入する場合は、さらに費用がかかる場合があります。
しかし、加入している生命保険によっては、手術の給付金が支給される可能性があるので、ICLを受ける際は事前に加入している保険会社に問い合わせてみると良いでしょう。また、確定申告をすると、医療費控除が受けられることがあります。
■ICLの歴史を見る。実はレーシックよりも歴史がある!

ICLは、1986年にヨーロッパで初めて使用されました。ちなみにレーシックが誕生したのが1990年代ですから、それよりも前に開発されていたことになります。その後、約70以上もの国で実績を重ねてきたのです。
日本に初めてICLが導入されたのは、1997年のことです。しかし、日本は安全性の評価が非常に厳格なため、2003年に初めて臨床試験が行われ、2010年にようやくICLの安全性と有効性が認められました。高度管理医療機器である「有水晶体後房レンズ」として、厚生労働省の国内承認を得られることとなったのです。
現在使用されているICLのレンズは「V5」モデルですが、国内承認された当時に使用されていたのは、そのひとつ前のモデルとなる「V4」でした。しかし、V4モデルのレンズでICLの手術を受けた一部の人に、白内障や緑内障が発症するという合併症が報告されました。
そのため、V4モデルから改良を重ね、レンズの中心に0.36mmという非常に小さな通水孔を開けた「V4c」というモデルが開発されたのです(2014年厚生労働省認可)。ちなみに、この「V4c」モデルを開発した国は、他でもない日本なんですよ。このV4cモデルのレンズを使用することで、術後の合併症の問題は解決へ。
その後、2016年には「V5(EVO+)モデル」が開発されました。このレンズはレンズ径が大きく、見え方の質が改善されたのが大きな特徴です。そのため、夜間になると光がにじんだりまぶしく感じたりする「ハロー・グレア現象」が発症するリスクがさらに軽減されました。安全性と有効性が高まったことから、ICLは広く認知されるようになり、ここ数年の間で、手術を受ける人が大きく増加傾向にあります。
■安全性と有効性が進化するICL
レーシックよりも古い歴史を持つICLの、ここ数年の進化は目覚ましいものがあります。そのため、レーシックよりもICLを選ぶ方は増えつつあるのが現状。とはいえ、信頼できる病院選びが大切です。ICLに関してきちんと説明を受けた上で、メリットやデメリットを理解し、自分に合った医療機関を選ぶようにしましょう。