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ICLの度数はどうやって決まる?ライフスタイルに合わせた見え方を選ぼう

「ICLの手術を受けたいけれど、自分が快適に見られる適応度数はどれくらいなんだろう?」と気になっている人は多いはず。そこでこの記事では、ICLのレンズ度数は一般的にどのように決められているのか、解説していきます。この記事を読めば、ライフスタイルに適した見え方はどれくらいなのかが理解できるはずです。
■ICLってどんな手術?
まずは、ICLとはどのような視力矯正法か、また、手術の手順について紹介しましょう。
・ICLとは
ICLとは、目の中にソフトコンタクトレンズのような柔らかくて小さな眼内レンズを挿入して、近視や遠視、乱視を矯正する手術です。レーシックとは違って角膜を削らないため、術後すぐ視力回復が望めます。ICLは、厚生労働省の認可を受けている、安全性と有効性の高い視力矯正法です。
・ICL手術の流れを簡単に説明
ICLの手術は入院の必要がなく、日帰りで受けることが可能です。手術はまず、目薬で瞳孔を拡大させ点眼麻酔で目に麻酔をします。麻酔が効いてきたら、角膜の黒目と白目の縁の部分を3mm程度切開。折りたたんだレンズを入れたら、水晶体と虹彩の間へと固定し、瞳孔を縮小する目薬を入れると、終了です。
・ICLのメリットとは?
メリットについて見ていきましょう。
裸眼でもよく見えるようになる
メガネやコンタクトを使わなくても良好な視力を得られる、というのがICLの最大のメリット。眼鏡のように、ずれたり落ちたりする心配がなく、コンタクトレンズのように毎日のお手入れも必要ありません。
いつでも元の状態に戻せる
ICLは眼の中にレンズを入れて視力を矯正するので、レンズを取り出せば、いつでも手術前の状態に戻せます。例えば手術後に白内障になった場合でも、レンズを摘出すれば白内障手術が可能です。また、術後に近視や乱視が進んだとしても、度数変更すれば良好な見え方にも変えられます。
適応範囲が広い
ICLの手術は、レーシックができない人の特徴として挙げられる、強度近視・乱視の人でも可能です。また、角膜が薄い人でも手術を受けることができます。
・ICLのデメリットは?
続いて、ICLの手術を受ける際の注意点をご紹介します。
自己負担額が大きい
ICLは保険の適応適用対象外なので、手術費用は全額自己負担です。そのため、手術の費用が高くなってしまう点がデメリットでしょう。
手術を受けるまでに日数がかかることがある
ICLのレンズは、一人ひとりオーダーメイド。レンズの在庫がない場合には、発注しなければいけません。その際、レンズが到着するまでに1~3カ月程度かかることも。
■正確な度数を決めるには「術前検査」が重要

ICLの度数を決めるために大切なのが「術前検査」です。術前検査では、眼の中を細部までしっかりと調べて、手術適応かどうかをチェック。検査結果をもとにレンズの度数計算を行います。
術前検査の主な項目は、以下の通りです。
・他覚的屈折検査…機械を使って近視や遠視、乱視の度数を計測。
・自覚的屈折検査…裸眼の視力と矯正視力をはかる検査。
・眼圧検査…眼球の内圧を調べるための検査。
・サイプレジン検査…目薬でピントを合わせる筋肉を弛緩して、より正確な近視や遠視、乱視の度数を計測。
・眼軸長測定…「眼軸」と呼ばれる眼球の長さを測定する検査。
・角膜形状解析…角膜の形を調べます。
・角膜内皮細胞検査…角膜の透明性を保つ「角膜内皮細胞」という細胞の数を調べる検査。
・前眼部画像解析…「前眼部」と呼ばれる水晶体よりも前の部分を調べ、ICLが入るスペーが十分にあるかどうかをチェック。
この中で、レンズの度数決定に深く関係するのが、他覚的屈折検査・自覚的屈折検査・サイプレジン検査です。
・サイプレジン検査って?
人は、ものを見ようとするとき、眼の中の筋肉を緊張させて水晶体を分厚くすることでピント合わせを行います。通常の検査では眼のピントが合った状態になるため、正確な近視や遠視、乱視の度数がはかれなくなるのです。
ピントが合った状態の視力のデータでレンズを決定してしまうと、「過矯正」という、見え過ぎの状態になってしまいます。過矯正のままで日常生活を過ごすと、眼精疲労になってしまう恐れも。
そこで、サイプレジンという眼の筋肉を休ませる目薬を点眼し、ピント合わせを全く行わない状態で眼の検査を行います。これが、サイプレジン検査です。
サイプレジンの目薬を点眼すると瞳孔が開くので、手元が見えにくい、光がまぶしく感じやすくなります。その状態が1日から2日続くため、仕事の休みを取るなど、スケジュールに余裕をもって検査を受けるようにしましょう。また、検査の際は、車での来院は控えてくださいね。
■ICLの度数はどう決めればいい?

ICLに限らず、コンタクトレンズやメガネなどの度数の決め方は、基本的に同じです。勘違いする人も多いのですが、「視力」と「度数」は違います。視力はどのくらい見えるかを数値化したものです。度数は視力を矯正する力及びその数値のことを指します。
度数が全くない、いわゆる「正視」の状態は±0。近視は-で、遠視は+で表します。数値が多くなるほど、近視または遠視の度数が強くなっていくのです。
度数の選び方は、眼の状態やライフスタイルによって、一人ひとり異なります。ここからは、目的別に度数の選び方をご紹介しましょう。
・車の運転をよくする人
車の運転をする人は、遠くがよく見えるようにするとよいでしょう。特に、夜間の運転をよくする人は、1.2程度の視力があれば運転に支障がない、といわれています。特に運転する習慣がない場合は、両眼とも1.0程度の視力があれば、生活に支障はないでしょう。
また、年齢が若い場合は、ピントを合わせる筋力がじゅうぶんにあるので、遠くがはっきり見えるレベルの度数にしても大丈夫です。しかし、だんだん歳を取るとともにピントを合わせる筋力も衰え、遠くから近く・近くから遠くへピントを切り替えるのが難しくなってきます。
ピントの調整がうまくできない状態で、遠くをはっきり見えるような度数に合わせてしまうと、眼精疲労の原因になる可能性も…。一般的にピントを合わせる筋力は、40代くらいから衰えるといわれています。そのような場合は、度数の低いレンズを処方する場合が多いです。
・近くを見る作業が多い人
パソコンや手作業など、近くを見る作業が多い人は、手元が楽に見えるレンズを入れると、目が疲れにくくなります。10代~30代の人の場合は、0.8~1.0くらいの見え方が一般的。40代以降になると、視力で判断するのは難しくなるので、術前検査の際にしっかり伝えて、適切な度数を判断してもらうことがおすすめです。
近くを見るときの適正な度数は、遠くがよく見える度数よりも、1~2度低くすることが多くなります。
ここでご紹介しているのはあくまでも一例。適正な度数はそれぞれの見え方やライフスタイルによって異なります。せっかくICLの手術を受けたのに、希望通りの見え方にならず「ICL手術、失敗しました」という羽目にならないように、術前検査と医師のカウンセリングをしっかりと受けるようにしましょう。
ICLの場合、途中でライフスタイルが変わった、遠くもしくは近くをもっとよく見えるようにしたくなった、という場合でも対応可能です。眼の中のレンズを交換することで、いつでも矯正することができますよ。
■術前検査で希望の見え方を手に入れよう
術前検査の結果が、レンズの度数を左右します。ICLの手術を成功させるためには、術前検査をしっかり行うことが大切です。確かに術前検査はやることがたくさんあるので「面倒だな」と感じることもあるかもしれません。しかし、これもクリアな視界を手に入れるためには重要なことです。嫌がらずにしっかり受けてくださいね。