ICLのレンズの素材が知りたい!ケアやレンズ交換は本当に要らないの?

出典:photoAC

眼の中に小さくて柔らかいソフトコンタクトレンズのような眼内レンズを挿入して近視や遠視、乱視を矯正するICL。眼の中に入れたレンズはケアの必要がなく、異常がない限りレンズ交換の必要もありません。そこで気になるのが、レンズの素材。「入れっぱなしのレンズって、どんなメーカーのどんな種類なんだろう」と気になっている人も多いのではないでしょうか。この記事では、ICLのレンズの種類や特徴を詳しく解説していきます。

■ICLの流れとは?受診から術後検診まで

出典:photoAC

まずは、ICLの手術がどのような流れで行われるのかを解説します。

・来院予約

手術を受ける前にカウンセリングと適応検査を行う必要があります。ICLの手術を受けたいと思ったら、まずは来院日の予約を取りましょう。予約の方法は電話やインターネットなど、医院によって異なります。

・適応検査・カウンセリング

眼の中を詳しく検査して、ICLの手術を受けられるかどうかを確認。さらにカウンセリングを行い、どのように手術が行われるかといった詳しい説明、疑問点や不安な点について話し合う時間を設けます。

・初回精密検査

適応検査の結果、手術適応と判断されたら、眼の中に入れるレンズの度数を決定する検査を行います。手術後の見え方を左右するとても大切な検査です。
精密に検査を行って正確なデータを取り、最適な度数を決定しなければならないため、3時間程度と長い時間を要します。

・最終精密検査

最終精密検査を行ってデータを再度検証し、オーダーするレンズが決定します。もし、検査結果が初回精密検査の結果と大きく違っている場合は、後日再検査をしなければなりません。

・レンズ発注・手術日予約

レンズの度数が決定し、予約金が入金されたら海外のレンズメーカーにレンズをオーダーします。一人ひとり完全オーダーメイドとなるので、レンズ到着までに2週間から数カ月程度かかります。
クリニックからレンズ到着の電話連絡があったら、手術日の決定へ。手術当日はもちろん、術前検査および術後検査の来院日もあわせて予約します。スケジュールが未定の場合は、後日改めて予約することも可能です。

・手術前準備

手術の3日前から消炎剤と抗菌剤の目薬を点眼します。当日は、散瞳剤を点眼して瞳孔を大きく開いてから点眼麻酔・眼の消毒を行い、いよいよ手術です。

・手術

麻酔が効いたことが確認できたら手術開始です。角膜に数mm程度の小さな創口を作り、レンズを折りたたんだ状態で挿入します。その後、レンズの両端を虹彩下に入れ固定すれば手術は終了。両眼約20分で手術は終了。手術後院内で休憩を取り、診察で異常がなければ帰宅できます。手術は日帰りで行われるので入院の必要はありません。

・術後検診

手術の翌日に診察を受けて眼の状態を確認します。
術後検診は、初回検診以降、3日後、1週間後、1カ月後、3カ月後、半年後、そして1年後と定期的に行われます。それ以降も毎年1回以上定期検診が必要です。

■ICLのレンズの種類

出典:phptoAC

ICLのレンズは1種類ではありません。現在日本では2種類、世界的に見ると3種類のレンズがICLに使用されています。それぞれの特徴を詳しく解説しましょう。

・ICLレンズ

アメリカのSTAAR社が製造しているのがICLレンズ。コラマー(Collamer)という親水性の良い素材でできているのが特徴です。ICLレンズが開発された当初は、レンズの中心にホールはあけられていませんでしたが、後に穴あき(ホール)タイプのICLレンズが開発されました。というのも、レンズに穴がないと手術後に眼圧が高くなってしまうリスクがあったため、当初のICL手術では眼の虹彩に穴をあける処置が必要だったのです。穴あきタイプのレンズにより、手術による眼の負担や合併症のリスクがさらに軽減されました。
その後、レンズの光学径が6.1mmに拡大され、夜に光がぎらついたりにじんでみえたりする「ハロー・グレア現象」の発生も低減したといいます。

・プレミアム眼内コンタクトレンズ

プレミアム眼内コンタクトレンズは、「ハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリル」という素材でできています。この素材は、水分の含有量が多く、たんぱく質などの汚れが付着しにくいのが特徴。眼の中で長期的に良好な視機能を維持することが可能です。また、レンズの光学径も6.6mm大きく、ハロー・グレア現象の抑制効果も高くいとされています。さらに、レンズには合計で7つのホールが設置されているので、眼圧の上昇を防ぐだけでなく、白内障・緑内障発生を抑制する効果も期待できるのです。

・Eyecrylレンズ

Eyecrylレンズも、プレミアム眼内コンタクトレンズと同じく、ハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリル素材でできたレンズです。水分の含有量が多いので、レンズに汚れが付きにくくなっています。レンズ性能はICLレンズとさほど変わりはありません。しかし、レンズの光学径が5mmと小さくなっているので、ハロー・グレア現象が起きる可能性が他のレンズよりも高いというデメリットがあります。

・レンズの素材は手術に影響するの?

前述した通り、ICLのレンズの素材には、「コラマー」と「ハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリル」という2種類があります。素材の特徴に違いはありますが、素材が違うからといって、手術の結果が大きく異なったり、見え方に変化が出たりするわけではありません。医院によって取り扱うレンズは異なるので、気になる方は事前に取り扱いレンズについて確認してみるとよいでしょう。

■ICLレンズの性能とは

ICL手術に使用されるレンズには、安心・安全で快適な見え方を維持するためにさまざまな工夫が施されています。ここでは、ICLレンズの主な性能を解説していきましょう。

・ハロー・グレア現象の抑制

人間の眼は、明るい所では瞳孔を小さく、暗い所では瞳孔を大きくすることで光が入ってくる量を調節しています。そのため、レンズのものを見る部分にあたる光学部よりも瞳孔が大きくなると、レンズのフチの部分が露出して光が乱反射してしまいます。これが、光がギラついたりにじんだりする「ハロー・グレア現象」です。
ICLレンズおよびプレミアム眼内レンズは、光学径が拡大されているので、手術後のハロー・グレア現象の抑制効果が期待できます。

・合併症の抑制

従来の眼内レンズは、挿入すると眼の中を循環している房水の流れが十分に確保できなくなるため、白内障および緑内障などの合併症を発症するリスクがありました。
しかし、穴あきタイプのICLレンズが開発されたので、房水の循環経路が確保され、合併症のリスクが軽減されるようになったのです。また、合計で7つのホールが設置されているプレミアム眼内コンタクトレンズでは、合併症の抑制効果がさらに高くなっています。

・白内障発症リスクの抑制

ICLレンズと水晶体の距離が近いと房水の循環が悪くなり、白内障の発症リスクが高くなってしまいます。そこで、プレミアム眼内レンズは、水晶体との距離を確保できるよう、「プレミアムカーブ」というデザインを採用。レンズと水晶体の間に十分な距離ができているので、白内障発症リスクを軽減できる効果が期待できます。

■ICLのレンズはまだまだ進化中!

ICLは、厚生労働省が認可した、安全性と有効性の高い視力矯正術。ICLの手術に使用されるレンズは、ただ良好な見え方を確保するだけでなく、合併症のリスクを軽減するなど、安全性と有効性が徐々に向上しています。まだまだレンズは進化の途中。この先さらに高性能なレンズが登場する可能性は大いにあります。どんなレンズが誕生するか、今後益々ICLへの期待が高まりますね。

一覧へ戻る