ARTICLE 記事

小学生の子供の視力検査の結果が悪くてショックを受けている、子供の視力が急激に悪くなっているので原因を知りたい…と思っている保護者の方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、子供視力低下の原因や、視力低下の予防策、また視力回復に有効な方法をご紹介します。子供の視力低下に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
■小学生の視力低下が急増中!
日本の子供は近視傾向にあります。文部科学省が2022年7月に公表した「2021年度学校保健統計調査(速報値)」によると、裸眼視力が1.0未満の子供の割合は、小学生で約36%、となりました。
また、成長するにつれて視力が悪くなる子供が多いようで、小学1年生で裸眼視力1.0以下の子供は4人に1人だったのに対し、小学6年生では約半数が裸眼視力1.0以下、という結果になっています。
中学生の場合は、約60%の子供が裸眼視力1.0以下。中学1年生の割合は約57%、中学3年生では約60%と、こちらも学年が上がるにつれて増加しています。
つまり、小学生で3割以上、中学生では過半数の子供が視力低下に悩まされている、ということ。この原因はいったいどこにあるのでしょうか?
■小学生の視力低下、原因は?

子供が小学校に入学してから視力が急激に下がった…と訴える保護者の方が多いようです。
そこでここからは、視力低下の主な原因をわかりやすく解説していきます。
・視力低下の原因1:遺伝
子供の視力低下の原因は、大きく分けて2つあると言われています。その1つが遺伝です。
父親もしくは母親、あるいはその両方が強い近視の場合、子供も早いうちから近視になりやすいと言われています。
・視力低下の原因2:環境
遺伝よりも影響が大きいと言われるのは、環境です。同じ近視要因の持ち主でも、近視になりやすい環境に育った子供の方が視力低下の発生率が高いと言われています。
主な環境要因は、以下の通りです。
近見作業の増加
近くを見る時間が増えたことにより、子供の近視が増加した、と考えられています。スマートフォンやタブレット、パソコンなどの普及により、子供たちは、近くのものを長時間見続けることが当たり前に。
また、学校以外に塾に通うことで、子供たちの勉強時間も増えています。
ゲームや勉強などで長い間近くを見続けると、目のピント機能が近くで固定されてしまい、近視になりやすくなるのです。
睡眠時間の減少
睡眠時間も視力に大きく影響している、と言われています。強度近視の子供は、そうでない子供よりも就寝時間が遅く、また睡眠時間が短いという研究結果も出ているんですよ。
屋外活動の減少
屋外活動が短いと、近視になるリスクが高くなることが分かっています。
太陽光に含まれるバイオレットライトが目に入れば、近視の進行を抑制すると言われる「EGR1(Early Growth Response 1)」という遺伝子が活性化。
バイオレットライトはLEDなどの室内光にはほとんど含まれません。また、UVカットの窓ガラスはバイオレットライトも同時にカットしてしまうことが多いので、室内にいると、ほぼ浴びることができないのです。
最近では、子供たちが外で遊ぶ時間が減少傾向しています。そのため、バイオレットライトを浴びる機会がなく、近視になりやすいと考えられるでしょう。
■視力低下を予防するにはどうしたらいい?

子供の視力低下を予防するにはどうすればいいのでしょうか。主な対策をご紹介しましょう。
・生活習慣の改善
まずは、生活習慣の改善から行いましょう。
積極的に外で遊ぶ
屋外で遊んで、バイオレットライトを浴びるようにしましょう。できれば1日2時間以上外に出て、バイオレットライトを浴びることが理想です。暑い日には熱中症対策を忘れずに。
近見作業は明るい環境と正しい姿勢で
読書をしたり、パソコンやスマートフォンを見たりするときは、目との距離を30cm程度離すようにしましょう。また、本やスマホを見るときに、頭を傾けて片目が机に近い状態で座ってしまうと、近づいている方の目の近視が進行しやすくなります。
近見作業を行うときは、部屋を明るくすることも大切です。
また、長時間のゲームやスマートフォンの操作、読書は疲れ目の原因となります。疲れ目はさまざまな目の病気と関連があり、近視もその1つ。
30分に1回は遠くの景色を見て、目を休ませてあげましょう。
質の良い睡眠を心掛ける
日中はしっかり日光を浴びて、夜は段々と暗くするなど、質の良い睡眠がとれるよう、生活リズムを整えましょう。特に、眠る2~3時間前のパソコンやスマートフォンは要注意。画面から出ているブルーライトには、身体を目覚めさせる作用があるので、目がさえてしまう可能性があります。
・適切なメガネ・コンタクトの使用
子供の視力低下は放置せずに、適切なメガネを使用するようにしましょう。見えにくい状態のまま放っておくと、目の機能がうまく発達しなくなる恐れがあります。その影響が視神経まで及んでしまうと、メガネをかけてもよく見えなくなる恐れがあります。
左右の視力差を放置してしまうと、見えにくいほうの目が、メガネをかけても0.6以下の「弱視」になる可能性も。さらに、子供の目の筋肉はあまり強くないので、適切な視力矯正を行わないと、黒目の位置がずれる「斜視」になってしまうこともあります。
また、よく見えないので姿勢や目つきが悪くなったり、勉強に集中できずに成績が下がってしまったりすることもあるでしょう。
メガネの他にも、コンタクトレンズで視力を矯正する方法があります。コンタクトレンズは年齢制限がありませんので、ケアの仕方や使用時間などのルールがしっかり守れて、取り扱いがスムーズにできれば、保護者の管理のもとでコンタクトレンズデビューしてもよいかもしれません。
・眼科で治療を受ける
眼科では近視の進行を抑えるさまざまな治療を行っています。子供の視力低下が気になったら、早めに眼科医に相談するとよいでしょう。主な治療をご紹介します。
点眼治療
マイオピンという目薬を、1日1回寝る前に点眼して、近視の進行を抑制します。マイオピンは、6歳~12歳の比較的近視が軽い子供に有効だとされています。重篤な副作用の報告もありません。近視の進行を平均で60%程度抑えることができる、とされています。
オルソケラトロジー
夜眠っている間に、特殊なコンタクトレンズを装用して、角膜の形状を正しくして近視を矯正する治療法です。寝ている間に近視が矯正されるので、日中は裸眼で過ごすことができます。
主に、軽度から中等度の近視の人に効果がある治療法です。
・18歳以上になったらICLも検討を
どうしてもメガネやコンタクトレンズがわずらわしい、裸眼で生活したい、という方におすすめなのが、ICLです。
ICLとは、目の中にソフトコンタクトレンズのような小さくて柔らかい眼内レンズを挿入し、近視や遠視、乱視を矯正し、視力を戻す方法です。
手術と言ってもレーシックのように角膜を削る必要はありません。そのため、何かあったらレンズを取り出すことで、いつでも手術前の状態に戻すことができます。
また、目の中に入れたレンズは、面倒なケアや交換の必要がなく、長期間に渡って良好な視力が期待できるので、裸眼と同じ生活が送れるのです。
ICLは安全性と有効性の高さから、厚生労働省が認めた視力回復手術です。適用年齢は18歳からなので、子供が成人したら検討してもよいでしょう。
■子供の視力低下は早めに対策を
子供の視力低下を放っておくと、ますます近視が進行するだけでなく、疲れ目や集中力の低下に繋がる可能性があります。子供が見えにくそうにしていたり、視力低下を訴えてきたりしたときは、まずは眼科に相談し、視力低下の原因を見つけ、対応しましょう。また、目が悪くならないよう、日常生活に注意することも大切です。